Drama&Movie
   
 

 


2000.11.1 やまとなでしこ 

 さて今週の菜々子。堤真一に手を握ってもらったくらいでグッときてるわ。結婚式で堤のスピーチにうっとりしちゃうわ。あきらかにヘン。「男は年収、遺産、不動産」と豪語していた菜々子はいったいどこへ?

 この謎を解くヒントはなんと「夢の王子様」(あーあ、少女マンガじゃないんだから頼むよ〜)。幼い頃貧乏に苦しんだ菜々子の理想はてっきり金持ち男なのかと思っていたら、「いつか君を迎えにくる」と夢の中でささやく王子様もまた彼女の理想らしい。つまり菜々子にとって結婚の対象は二重構造になってるみたいなのだ。コレが彼女の人格をややこしくしてるのね。今週の菜々子のらしからぬ行動は全部この王子様伝説のせいだ。

 
 過労(=合コンのやりすぎ)でぶったおれた菜々子を病院に運び、菜々子が王子様の夢を見ながら爆睡してる間ずっと手を握っていた人。なぜかその人こそ王子様だと思いこむ菜々子。なんか無理矢理っぽく、しかも唐突な夢の王子様話。反則でねーか?

 しかも菜々子ったら、手を握ってくれてた人が東十条(東幹久)だと思ってたときは、「ふーん。王子様は東十条さんだったのね」と、ちっともうれしそうじゃなかったくせに。実は堤だったとわかったとたん動揺しまくるってどゆこと?ラブホから矢田亜希子と出てきた堤に出くわした時も「お盛んですこと!」と焼きモチやきまくり。すっかりフツーの女になっちゃって。

 東幹久はたしかに朝になってから手を握ってただけだけど、誰よりも菜々子を愛してるし、なにより大病院のあととり息子、文句なくお金持ちじゃんか。愛情とお金を両方もってる男と、愛情しかない貧乏男とどっちが上なんだ?

 
 なーんて、答えはわかりきってるけどさ。最近まで堤真一は菜々子に嘘つき呼ばわりされ、毛虫のように嫌われ、どん底だったが。今週の堤は、いつになくタキシードが似合ってとても魚屋には見えないし、しかもMITに留学してた数学者ですってよ奥様。つうわけで、最低ランクと思ってた男にちょっとでも光るところがあったらデカイじゃん、という挽回の法則と申しますか。菜々子、金持ちのブタ男ばっかおっかけてた時には気づかなかったんだろうけど、実は堤はタイプだったに違いない。

 しかし、この王子様伝説のおかげで、堤は浮上するチャンスをつかんだが、ドラマ的には菜々子は平凡な女になってしまって、単なるラブストーリーになっちゃいそう。

 そして脇役の東幹久は、どんなにお金持ちでもいくら愛情をそそいでもむくわれない運命。きっと最後はこの手のドラマにありがちな数合わせの法則により、同じく堤にふりむいてもらえそうもない矢田亜希子とくっつくのかしらん。




2000.11.12 やまとなでしこ 

 唐突だが、うちの夫は洋服と靴に関して買い物嫌いである。とくに靴はボロボロになるまで履き倒すので、恥ずかしくて困る。そんな夫をようやく拉致してデパートに連れていったのが先週末のこと。ここぞとばかりに靴を買いまくった。

 で、その翌日の「やまとなでしこ」。中学校の同窓会に出席した菜々子は、例によって同級生の男たちの値踏みをはじめた。カメラ(=菜々子の視線)が、汚いスニーカーや汚れた革靴をなめるようにうつす。ひええええ!靴を買っておいてよかったあ。セーーーフ!

 
 で、会社から帰った夫にさっそくこのシーンを見せた。「ほらほら人間は靴で値踏みされるのよ〜」「ボロい靴じゃ菜々子に相手にされないのよ〜」さらに、有名ブランドのデザイナーになった同級生男子がピカピカの靴をはいてるシーンも見せた。「ほらっ男のランクが一発でわかるでしょ〜?」

 すると夫は「このドラマはどんなストーリーなんだ?」と聞くではないか。しまった。余計なことをしてしまった。だって私は夫と一緒にドラマを見るのがイヤなんだもん。なぜかというと夫は飽きっぽくて少しでもたるい場面があると、雑誌をパラパラめくってみたり、Macで将棋ゲームを「パチッ、パチッ、王手です」・・・うるさーい!

 だから今クールは絶対安全な(=場面がめまぐるしく退屈する暇がない)「ラブコンプレックス」しか見せていなかったのだが。ふと魔がさして「じゃあちょっとだけね」と「やまとなでしこ」を見せたところ、なんと!夫はすっかりはまってしまったのだ。

 めずらしく将棋ゲームもやらずに、食い入るように画面を見つめる夫。堤真一が魚屋だとばれそうになる場面では、部屋の中をぐるぐる歩きまわる夫。ドラマ慣れしていないため過剰に反応するのが彼のクセなのだが、その様子はいつ見ても面白い。さらに、菜々子が堤に「キライになりました。さようなら」といえば、手をたたいて喜ぶ夫。デザイナー男が菜々子に「好きなだけ洋服を持っていってくれたまえ」といえば、「すげえな、洋服バイキングかよ」と画面に語りかける夫。

 そして、菜々子の洋服をとってくるため、堤が火事の中にとびこむシーン。堤はとってくるべき洋服のブランドについて菜々子に指示されるのだが、この場面、たーさんによると「堤はあやうく菜々子に殺されるところだった」という感想であった。しかし夫は、堤が菜々子の白い服をゲットした瞬間、「やばいぜ。1着だけじゃ菜々子に怒られちゃうよ〜」とオロオロしだした。・・・よっぽど日頃から妻に怒られているのであろうか?

 
 そんなこんなで、真夜中だっつーのに「次も次も」と催促されて4話ぶっつづけで見てしまった。かの「踊る大捜査線」も「古畑任三郎」も夫をくぎづけにできなかったことを思うと、これは快挙である。ナンダカンダいって「やまとなでしこ」には人をそらさない何かがあるのだろうか。

 でもよく考えると、「うちの夫が夢中です」というのは、「偏食なウチの子でも全部食べましたのよ〜」というのと似てるような気もする。腕によりをかけた料理にそんな誉め方をされたら、がっかりもいいところである。そう考えると「やまとなでしこ」関係者はうれしくないかも。

 などと書いている私の横で、ストーリーの復習を始める人物がひとり。明日の「やまとなでしこ」にそなえて、おこたりない夫であった・・。




2000.11.21 やまとなでしこ外伝 Part1

 毎クール、ドラマもおしつまってくると、テレビ雑誌などで「どうなる?最終回大予想!」みたいな特集が組まれる。が、ラスト直前で大予想ったって、もういい加減ストーリーも先が見えちゃってるわけで。「○○と××は破局?それとも結ばれる?」とか「○○は死んじゃうの?死なないの?」みたいな二者択一のつまんない予想ばっか。やはりドラマフリークなら、ストーリーが半分位すすんだところで、残りの全部を予想というか創作するくらいでなければいけないのではないか。

 というわけで今回は特別に、なーはるが考えた「やまとなでしこ後半ストーリー」をお届けします。実物の「やまとなでしこ」は最後に桜子(菜々子)がまともな女になるに決まってるけど、それじゃ面白くないつうことで、「なるべく桜子がイヤな女のまんま、いかにハッピーエンドにもってくか」という難しい展開に挑戦してみました。よって実物とはかなり内容が違うと思われるので、主旨をご理解の上お読みください。


「やまとなでしこ外伝」by なーはる

__ 魚春 __

 魚春の土地の買収主は東十条病院だった。雨の中たちつくす欧介。赤い傘をさした桜子が通りかかる。

欧介「僕の負けです。心よりお金ですよね
桜子「病院のことは・・」
欧介「いいんです。あなたのせいじゃない」
桜子「・・・」


__ ニューヨーク __

桜子 「きゃ〜、こっちのドレスもいいなー。迷っちゃう〜」
東十条「だったらそっちも買おう。お色直しが12回も見られるなんて楽しみだ」
桜子 「うれしいー!幸せすぎてこわ〜い」


__ 東京 __

 金策に走り回る欧介。しかし信金も銀行もらちがあかず。ご隠居さんの好意で連れていってもらった競馬での一発逆転もならず、万策つきた欧介。ついに魚春の取り壊し工事が始まり、母親は脳梗塞で倒れ、まさにドン底であった。


__ 佐久間邸 __

佐久間「信じられないことだが、こんなものが来た」
粕屋 「俺のとこにも来た」
花房 「僕のとこにも」
佐久間「あの女のことだ。何かウラがあるに違いないぞっ」
花房 「でも、お祝い金はいらないから是非出席してくださいって書いてありますよ」
粕屋 「ますます怪しいじゃねーかよ」

 ピンポーン(玄関チャイムの音)。欧介が入ってきた。あわてて封筒を隠す佐久間たち。

欧介 「昼間からみんなでどうしたの?」
佐久間「お、お前こそどうしてるんだ?」
欧介 「うん。とりあえず、隣町の親戚がやってるスーパーに魚を置かせてもらって、細々と営業してるよ。土知売ったお金で借金返して、少し余ったお金でアパートも借りたし。お袋の入院費くらいは稼がないと」
粕屋 「そうか。なんとか一息ついたな」
欧介 「うん。ところでこんなのが来たんだけど」

 封筒をとりだす欧介。それは、桜子と東十条の結婚式の招待状だった。

花房 「うそっ!欧介さんのとこにも来たんですか!」

 招待状には『欧介さん、ケーキを均等に切り分けに来てくださいね。桜子』と書いてあった。

佐久間「あ、悪魔のような女だ。俺は絶対出席しないぞっ」
粕屋 「俺も絶対行かないぞー!」
真理子「あら〜いいじゃない。欧介君行けば?桜子さんの花嫁姿なんてめったに見られないわよ〜」

 あいかわらず、欧介の幸せを願ってるんだか、願ってないんだか、さっぱりわからない真理子であった。


__ 東十条邸 __

桜子 「招待状も全部出し終わってほっとしたわ」
東十条「でも君はお母さんもお父さんも亡くしていたなんて、寂しかっただろうね。知らなくてごめんよ」
桜子 「ううんいいの。ひとりっ子だったから一人には慣れてるし」
東十条「親戚の方々が出席してくれるといいね」
桜子 「ええ」

 あいかわらず、桜子の言うことは全部信じる性格のよい東十条司であった・・。

(次回につづく)




2000.11.22 やまとなでしこ外伝 Part2

 前回にひきつづき、「やまとなでしこ外伝」をお送りしています。


__ 住宅街 __

 自転車の荷台にトロ箱をのせて歩く欧介。親戚のスーパーへ魚を置かせてもらう以外は、以前のお得意さん回りをしているのだ。最近は、新しくお得意さんを開拓するためあちこちの飲食店などもまわっている。営業下手な欧介なのでたいていは断られてしまうのだが・・。

主婦A「ちょっと、おたく魚屋さん?」
欧介 「そうですけど」
主婦B「お魚売ってもらえるの?」
欧介 「あ、いいですよ」
主婦C「あら、助かるわ〜。このあたり魚屋さんがなくって」

 思わぬところで営業できたため、にこにこ顔の欧介。

主婦A「あら、あなた堤真一に似てるわね」
主婦B「堤真一って?」
主婦C「ほら今人気の『やまとなでしこ』で松嶋菜々子と共演してる」
主婦B「あ〜、あの地味な人
欧介 「(ゴホン)じゃ、サバとあさりで・・」
主婦A 「500円でいいわよねっ」

 あいかわらず、商売下手な欧介であった。


__ 公園のベンチ __

 自転車を止めてひと息つく欧介。上着の内ポケットから封筒をとりだす。そう、今日は桜子と東十条の結婚式の日なのだ。真理子にそそのかされて出席の返事を出してしまったけど、でも行かないつもりの欧介。なのに招待状を持っている欧介。ほんとうに優柔不断な男だ。

 そんな欧介の背後からのぞきこむ女が一人。さっき魚を買った主婦だ。

主婦「結婚式の招待状?あら、今日じゃないの」
欧介「いえ、いいんです。もう間に合わないし、礼服も持ってないし」
主婦「じゃあ息子のを貸してあげるわ。ウチすぐそこだから、ね?」
欧介「いえ、でも、あの・・」

 主婦に引きずられていく欧介。あいかわらず断れない性格だった。


__ 教会 __

 トロ箱をのせた自転車を押すタキシード姿の欧介。通りかかる人がジロジロ見る。 (やっぱり帰ろうか・・)と、その時、歓声が聞こえた。教会から出てくる新郎新婦を迎える人々の拍手。幸せそうに微笑む桜子と東十条。リムジンに乗り込み、走り出す一瞬、欧介と桜子の目が合った。呆然と見送る欧介の肩を誰かがポンとたたいた。

佐久間「結局お前も来たのか」
粕屋 「お前ってほんとに人がいいよなー」
花房 「これから披露宴ですけど」
なみ 「欧介さんも」
若葉 「一緒に行きます?」

 なみと若葉はともかく、佐久間たちは出席しないと言っていたくせに。あいかわらず節操のない男達である。


__ 披露宴会場 __

佐久間「えーと、僕らの席は・・」
真理子「入ってすぐのトコよ」
粕屋 「おい、無料招待にしちゃずいぶん末席だな」
花房 「ていうか、ここ親族の席ですよ」
一同 「えっ!?」

 どうやら、佐久間たちは桜子の親戚ということになっているらしい。まんまと桜子にはめられた佐久間たちだった。

 そんな中、欧介は気後れしていた。(なんで僕はここにいるんだろ?)招待客千人は入りそうな豪華な披露宴会場。高い天井にはシャンデリアがまばゆい。そしてひな壇の横にあるウェディングケーキは少なくとも高さ5メートルはありそうだ。「やー!君かあ〜」と欧介の肩をたたいたのは東十条病院の顧問の教授。「今日は君がケーキを切りわけるそうじゃないか。このケーキはてっぺんまで生クリームとスポンジでできとるらしいぞ。また見事なメスさばきを見せてくれたまえよー。はっはっは」とあいかわらず酔っぱらっている。

 やがて場内が暗くなり、新郎新婦の入場。今まで見た中で一番キレイな桜子に欧介は見とれた。高いひな壇に登り、高いウェディングケーキに入刀する新郎新婦。高くて手の届かない所にいる桜子。神様のルールは不公平だ・・。欧介はふらっと席をたった。

佐久間「お、欧介?」
真理子「やっぱり欧介君には・・」
粕屋 「5メートルのケーキを切り分けるのは重荷だったか」パコーン!

 佐久間が粕屋のあたまをひっぱたいた音であった。

 欧介がそっと会場の扉をあけて出ようとしたとき、入れ替わりにみすぼらしい身なりの初老の男が入ってきた。すれちがいざまにその男はつぶやく「桜子・・」。(えっ?)立ち止まる欧介。その横を4人の男がすりぬけていった。初老の男と4人の男達はひな壇に向かって・・

男 「桜子〜!わしだ〜!お父ちゃんだー!
男達「桜子〜!兄ちゃんだー!探したぞー!」

 ケーキを切る手がぴたっと止まる。

桜子 「お、お父ちゃん、兄ちゃんたち・・」
東十条「桜子?君のお父さんは亡くなったはずじゃ?それに、ひとりっ子だって・・」
男  「桜子〜、お前が4万2千円の貯金通帳を持って家出したのは、恨んどらんから〜」
会場 「よ、4万2千円の貯金通帳!?」
桜子 「・・ぁ・・っ・・」

 ふいに桜子が気を失い、あわてて抱きかかえようとする東十条。ところがはずみでケーキの台に体当たりしてしまい、高さ5メートルの巨大ケーキが主賓席に向かって倒れてきた。飛び散るクリーム、逃げようとしてボーイに体当たりする人々、すっ飛ぶシャンパン、テーブルクロスをひっぱりながら逃げまどい、クリームの海でもがく人々。そんな中クリームにまみれてアハアハ笑う酔っぱらい教授の姿が見えた。

 そんな光景を呆然と見つめる欧介だった・・。

(次回につづく)




2000.11.25 やまとなでしこ外伝 Part3

 前回、前々回につづいて、「やまとなでしこ外伝」をお送りしちょります。


__ 代官山町 __ 

 トロ箱をのせた自転車を押しながら歩く欧介。あの結婚式から1週間、桜子の行方はわからない。聞くところによると、ウソをついていたことが東十条家の怒りをかい、破談になったという。

 (桜子さんはどこでどうしているんだろう?)気がつくと、桜子と東十条が式をあげた教会の前に来ていた。歓声がわき上がり、新郎新婦が教会から出てくる。(桜子さんもあんな風に幸せそうだったのに)新郎新婦を見つめる欧介。

欧介「あっ、き、君は!」
新郎「あっ、あんたは!」

 なんと新郎は、合コンで桜子にコーヒーをかけられたあのブ男。経営するネット関連ベンチャー会社が倒産して桜子にふられてストーカーになり、桜子をとられたと勘違いして欧介を殴ったあいつであった。

欧介「け、結婚したんだね。おめでとう」
ブ男「あの時は悪かったな。あんたも桜子さんと幸せにな」
欧介「い、いや、僕はふられたんだ」
ブ男「そうか・・あ、もしよかったらコレ・・」

 ブ男は欧介に名刺をわたし、手を振って新婦とともにリムジンにのりこんで去っていった・・。


__ 公園のベンチ __

 どっこい桜子は生きていた。ローンの請求書の束をいそがしくめくる桜子。

「あ〜あ、披露宴の無料招待がけっこう痛かったわ」
「あのまま結婚してりゃ、あっさり回収できてたのに」

 やはり破談くらいで消えるようなタマじゃない。

「もしもし〜、弁護士の○○先生〜?桜子ですぅ」
「えっ?今日はお忙しい?それじゃまたかけます〜」

 ピッと携帯を切る桜子。眉間にシワ。この1週間キープ君たちに片っぱしから電話してるのだが、誰もつかまらないのだ。もしかしたら、あの披露宴の話がもう伝わっているのかもしれない。

「あーあ、お金持ちのギョーカイもあんがい狭いのね」

 スッチーも結婚退職してしまい、退職金は式場への弁償金(ケーキの後始末代含む)と招待客へのお詫び金(クリーニング代含む)で持っていかれた上、退職前のローンの請求や何やらが一気にやってきた桜子。宮脇(=桜子の同級生のデザイナー)にプレゼントされた洋服も全部質に入れたが焼け石に水。まさか桜子が欧介よりも貧しい超ビンボーな身の上になってしまうとは。

 しかしいつまでもこうしていられない。なんとかお金を工面しなくっちゃ。ベンチからすっくと立ち上がる桜子。けれどとつぜん足元がよろめき、意識が遠のく。薄れゆく意識の中、桜子の目にとびこんできたのは、プロミスの黄色い看板、じゃなくて欧介だった。くずれおちる桜子を抱きかかえる欧介。

「桜子さん!しっかりしてくださいっ!」


__ 慶明病院の病室 __

佐久間「これは深刻な・・空腹状態だ」
欧介 「へ?」
佐久間「ひらたくいえば、行きだおれだ」
欧介 「行きだおれ!?」
佐久間「ま、腹がへって気絶してるだけだから、目が覚めたらなんか食わせりゃ回復するさ」
欧介 「そ、そうか。じゃあ刺身でも持ってくるよ」

 欧介の後ろ姿を見送りながら「ホントにお前はお人好しだな」とつぶやく佐久間。ベッドでは桜子が微笑みながら夢を見ていた。ごちそうをかかえて「迎えにきたよ桜子」とささやく王子様の夢を・・。


__ 桜子の病室 __

 病院の食事をガツガツたいらげる桜子。そこへ欧介。

欧介「桜子さん、ヒラメの刺身を持ってきたんですけど・・」
桜子「ヒラメ!?いただくわっ!」

 端から5切れずついっぺんにヒラメを箸ですくって口にほおりこむ桜子。目を丸くする欧介。

桜子「ふーっ!ごちそうさま。でもお代は払えなくってよ」
欧介「かまいませんよ」
桜子「そ。あら?魚春はなくなったはずじゃ?」
欧介「店はなくなったけど、スーパーの魚売場をまかせてもらってるんです。外回りの営業もしてるし。ぎりぎりだけど何とかやってます。それにもうひとつ・・」
桜子「もうひとつ?


__ どこかの部屋 __

 真っ暗な部屋で青白く光るパソコンのモニタを見つめる二人の男。ときどきモニタを指さしながらニヤついたり、なにやら怪しげである。

「いいじゃない」
「最高だよ」
うひひひひ

 男二人は、欧介と元ストーカーのブ男だった。エッチな画像でも見てるのだろうか?それとも・・


__ 病院のトイレ __

 すっかり元気になった桜子。しかし問題はお金がない、ということだ。たった1日の入院費も払えないなんて。鏡に映る自分の顔を見ながらため息をつく桜子。すると隣りで手を洗っていた女性も同時にため息をつく。

桜子&女性「貧乏なんて大きらい・・」(同時に)
桜子&女性「・・あらオホホ」(顔を見合わせて)
女性   「あっあなた。ゆきこさん?・・」
桜子   「え?」

 女性は、同じ病院に入院中の欧介の母であった。


__ 桜子のアパート __

 ポストをのぞく桜子。またローンの請求書の嵐である。泣きっ面にハチ。請求書を見ながら、病院での欧介の母との会話を思い出す桜子。桜子の入院費をへそくりから出してくれた欧介の母は「そのかわり桜子さんにお願いが・・」と頼みごとをしたのだ。当然イヤとはいえず引き受けた桜子だが正直気が重かった。

 ふと請求書の束の中に、手書きの封筒を一通見つけた桜子。古風で達筆なこの文字は・・

「桜子様 先日は結婚式を台無しにして本当に申し訳なかったちゃ。ずっと探しとった桜子が見つかって、思わず声をかけてしもたがいちゃ。結婚がだちゃかんになったと聞いて、合わせる顔がないがいちゃ。父ちゃんは、新しく船もこうて桜丸と名付けたちゃ。借金はあるけれど、兄さん達も立派な漁師としてがんばっとるちゃ。少ないけど、これで何かこうてくだはれ。 父」

 封筒の中には、千円札が三枚。

「父ちゃん、三千円じゃ何も買えないちゃ」と、つぶやく桜子。

 たったの三千円。でも貧乏な父にはこんなはした金でもひねり出すのは大変だったかもしれない。スッチーだった時、桜子は父に一円たりとも送金したことなどなかった。あの頃、給料の中から三千円でも、三万円でも、送ってあげられただろうに。貧乏な父がこうしてお金を送ってくれたのに、リッチだった自分に何故それができなかったんだろう。三千円を握りしめた桜子の手にポトリと暖かいものが落ちた。鬼の目にも涙・・

*父の手紙の富山弁は富山弁変換マシ〜ンを利用させていただきました

(次回につづく)




2000.11.28 やまとなでしこ外伝 Part4

 しつこく「やまとなでしこ外伝」Part4をお送りします。


__ スーパーマーケットの裏 __ 

 自転車の荷台にトロ箱を乗せる欧介。早朝に築地で仕入れた魚をスーパーに並べ、お得意さんに魚を届けてさっき戻ってきたところ。さらにこれから新規の客を開拓するため営業に行く準備をしているのだ。と、その時背後から女の声が・・

女 「おはよーございます」
欧介「おはよーございま・・・えっ!?

 桜子であった。

欧介「さ、桜子さん、こんなとこで何してるんですか!?」
桜子「お母様に頼まれましたの。欧介さんを手伝ってやってくれって。あなた営業さっぱりダメなんですって?」
欧介(お、おふくろ、余計なことを!)
桜子「出していただいた入院費の分を稼いだらすぐ帰りますから。まいりましょ」

 歩き出した桜子をあわてて追いかける欧介。


__ 商店街の寿司屋の前 __

 店から少し離れたところで自転車を止める欧介。

欧介「桜子さんはここで待っててください」
桜子「あら、私も行きます」
欧介「いえ、僕が一人で行ってきますから。ここにいてくださいっ」

 しかたなく物陰から見守る桜子。

欧介「ちわ、魚春と申しますが。こちらに魚を卸させていただけないでしょうか」
店主「間に合ってるよ

  ピシャッと扉をしめる店主。桜子の眉間にシワ(だめだこりゃ)。

欧介「つ、次行きます。あ、でも桜子さんはほんとに帰っていいですから」
桜子「いいえ。一緒にまいります」

 (桜子さんにこんなカッコ悪いところを見せなきゃならないなんて)とため息をつく欧介。おずおずと隣りの割烹料理屋に入る。

欧介「あの〜、魚春ですが。魚を入れさせていただけないでしょうか」
店主「魚春?」
欧介「はい。今いい秋サバがあるんですよ」
店主「悪いけど・・」

 と、その時誰かが欧介をどーんとつきとばした。床に倒れる欧介。振り向くとそれは桜子であった。チャッチャラ〜♪というBGM(桜子が金持ちを品定めする時のテーマソング)が流れる。

桜子「まあ〜こちらのようなお店にサバみたいな下魚をすすめるなんて、気が利かなくってごめんなさぁい。それよりいい明石の鯛が入っておりますのよ〜。ほらっこのツヤご覧になって。こんな立派なお店のますますの商売ご繁昌にいかがですかっ?」
店主「う〜ん、なかなかいい鯛だねえ。じゃあひとつもらっとくか」
桜子「お買いあげありがとうございますっ。よろしければ千円増しでサバもいかが?」
店主「おねえさん、商売上手いねえ」

 ぽか〜んと口をあけたまま桜子を見上げる欧介。

桜子「さっ、次いってみよう!


__ 佐久間邸 __

佐久間「それ本当か?」
花房 「マジですって。オレ見たんですもん」
佐久間「商店街を一緒に歩く欧介と神野桜子。この意味するところは・・」
粕屋 「二人はつきあってるんじゃないかな今泉君?んふふふ〜」(←突然古畑)
佐久間「古畑さんっ!それじゃボクが真剣に考えてる意味がないじゃないですかっ!」
粕屋 「西園寺君はどう思う〜?」(←悪ノリ)
花房 「桜子さんのことですから何かウラがあるのではないかと」

 そこへ真理子がお茶を運んできた。

真理子「そんなことないわよお。桜子さんはいい子よお」
佐久間「あのさ真理子、君はドラマが始まってからずっとそう言ってるけど。前から聞きたかったんだけど、何か根拠があるのかい?」
真理子「だってほら、あたしがそう言わないとドラマが進まないじゃない。けっこうあたしってこのドラマのキーパーソンだと思うのよね〜」
一同 「・・・・・」


__ 再び商店街 __

 得意の笑顔と営業トークで、結局魚を全部うりさばいた桜子。

欧介「すごいや、桜子さん」
桜子「お腹すいたわねー。お昼食べましょうよ」
欧介「僕ごちそうします!」

 一軒の釜飯屋の前で立ち止まる桜子。古い木造3階建ての店は、ひびわれたウィンドウの中に釜飯の見本がほこりをかぶっている。

桜子「ここにしましょう」
欧介「桜子さん、なにもこんな店でなくても」

 桜子が入り口を開けると・・・満席だった。「お二階にどうぞ〜」階段を登ると二階も満席で「三階にどうぞ〜」。やっと座ったと思ったら「注文してから炊きますのでお時間がかかります」。かなり待ってようやく出てきた釜飯は底のおこげまでおいしい絶品だった。

欧介「んまいっ!桜子さん、どうしてこの店がおいしいってわかったんですか?」

 しかし桜子はさっさと席をたって、何やら店主と話しこんでいる。戻ってきた桜子は満面の笑みを浮かべて、

桜子「欧介さん、いま商談をとりつけました」
欧介「えっ!?」
桜子「桜丸に日本海のカニをすぐ送ってもらわなきゃ!」
欧介「さ、桜丸??」

*釜飯屋は近鉄奈良駅近くに実在する「志津香」。ここに登場したのは十数年前の姿で、今は新しくなってるはず


__ 成田空港出発ロビー __

若葉 「あれ?東十条さんじゃないですか。どちらへ?」
東十条「あ、若葉さん。フィラデルフィアで学会があるんです。あ、あの結婚式は、せっかく来てくれたのにすみませんでした」
若葉 「いいえ、とんでもない。東十条さんこそ大変でしたね」
東十条「いえ、両親は反対したけど、がんばれなかったのは僕の力が足りなかったんです。 でも桜子さんが魚春で働いているって聞いてよかったなと思って・・」
若葉 「東十条さんてホントにいい人ですね」
東十条「いえ、そんなことは」
若葉 「実は私も失恋しちゃったんですよ」
東十条「そうなんですか?」
若葉 「ええ、たぶん・・。心の傷も縫ってくれるお医者様がいるといいですよね」

 はっとしたような表情で若葉の横顔を見つめる東十条司であった・・。

(最終回につづく)




2000.11.30 やまとなでしこ外伝 Part5(最終回)

__ どこかの部屋 __

  パソコンのモニタを見つめる欧介と元ストーカーのブ男。

ブ男「いよいよ完成ですよ。魚春ドットコム
欧介「魚春もeコマースに進出か〜」
ブ男「忙しくなりますよ
欧介「最近営業のほうも調子がいいんだ。手伝ってくれてる人が有能でさ」
ブ男「今度その人にも会わせてくださいよ

 (しまった・・二人を会わせるのはまずいよな)と心の中でつぶやく欧介。


__ 代官山町1丁目 __

 桜子のおかげで営業絶好調、オンライン販売もポツポツと注文が入り始めた欧介は思い切って店舗をオープンすることにした。ご隠居さんが保証人になってくれて、粕屋の勤める信用金庫から融資をうけることができたのだ。

欧介「また魚春を始めることができるなんて・・」

 建築中の新・魚春を感慨深げに見上げる欧介。気が早いけど、新しくゴム長靴と前掛けも買ってしまった。そこへ桜子がやってくる。

桜子「欧介さん、見て」

 なんと桜子もゴム長靴をはいている。

桜子「ちょっと気が早いけど、買っちゃった。どう?」
欧介「に、似合うよ」
桜子「でしょー?美人って何でも似合っちゃって恐いわよね〜」

 ゴム長靴をはいてはしゃぐ桜子を見て、欧介はふと、ずっと言いたかったセリフを言ってしまいたくなった。

欧介「さ、桜子さん、こうやってまた店を持つことができたのもあなたのおかげです」
桜子「まあね」
欧介「で、できたら、ずっと僕といてくれませんか?」
桜子「いいわよ。そう言うと思って実はこんなのも作っちゃったの」

(有)魚春 営業担当部長 神野桜子

 名刺であった。

 思わずカックンとなった欧介。と、その時、チャッチャラ〜♪ というBGMが流れ、ピッカピカの革靴の男がやってきた。桜子の同級生のデザイナーの宮脇だ。

宮脇「桜子さん、何てかっこうしてるんだ。僕がプレゼントした服はどうしたんだい?」
桜子「宮脇君!なぜここに?」
宮脇「結婚がダメになったと聞いてずっと探していたんだ」

 桜子の手をぎゅっと握る宮脇を見て、顔がひきつる欧介。
 と、そこへ、元ストーカーのブ男がやってきた。

ブ男「欧介さん、魚春新築なんですって?」
桜子「あっ!あなたは
ブ男「あっ桜子さん!
欧介「うっ
宮脇「誰?

 桜子にデザイナー男に元ストーカーに欧介。はっきりいって修羅場的組み合わせである。気まずい沈黙をなんとかしようと、とりあえず紹介を始める欧介。

欧介「えと、こちらは魚春営業担当部長の桜子さん・・」
ブ男「えっ桜子さんが」
欧介「で、こちらが魚春オンライン販売サイト担当の・・」
桜子「まあ、あなたが」

 と、その時デザイナー宮脇が急に笑い出した。

宮脇「あっはっはっ、君たちは魚屋さんのままごとでもやってるのかい?はは・・」

 お腹をかかえて笑う宮脇の耳に「マトリックス」のテーマ曲が聞こえてくる。顔をあげるとそこには、黒づくめの衣装にサングラスの3人(欧介=ネオ、桜子=トリニティ、ブ男=モーフィアス)が立っていた。宮脇のこめかみにチャッと銃をあてる桜子。

桜子「Dodge this!(よけてみな)
宮脇「ぎゃ〜!!」

 宮脇が走り去るとすぐに、話をはじめる桜子とブ男。

桜子「オンラインで富山のブリやカニを販売できないかしら?」
ブ男「寒ブリですか?」
桜子「そうそう。私の実家の船が水揚げしたのを直送してもらって」
ブ男「直送ならブリトロにもできますよね」
桜子「そうなんです!すっごい新鮮で・・」

 夢中で話し込む二人をほっとした顔で見つめる欧介。

*いきなりマトリックス・・・すいませんラブコンのぱくりです(笑)
*ブリトロとは、ブリの刺身でマグロのトロのように脂がのってるやつのこと。これがうまいのなんの・・


__ 新・魚春 __

 ついに魚春が完成した。

 開店前日、佐久間夫妻やご隠居さん夫妻、元ストーカーブ男夫妻がつぎつぎとお祝いにかけつける。東十条司と病院長夫人におさまった若葉も幸せそうな姿をみせた。富山からかけつけた桜子の父と兄たちの姿も見える。なみは粕屋と、花房は看護婦と一緒にやってきた(なみは花房と別れて粕屋とつきあっており、花房は看護婦とできちゃった婚)。

 退院した母と一緒ににこやか応対しながらも時々キョロキョロ誰かを探す欧介。

佐久間「桜子さんがいないじゃないか」
母  「さっきから心配してるんですよ」
粕屋 「そういえば、まだ店の看板も出てないけど」
欧介 「それも桜子さんが注文してくれてるはずなんだけど」

 と、そこへトラックがやってきた。大きな一枚板の看板をおろす職人たち。

東十条「これは立派な看板ですね」
若葉 「ほんとに。あれ?でも店の名前が書いてないけど?」
欧介 「えっ!?」

 と、その時1台の車が止まった。

お・ま・た

 日産アベニールサリューから降りてきた桜子は、なぜかはちまきに袴姿で大きな筆を手に持っている。

欧介「桜子さん、そのカッコはいったい・・?」
桜子「さっ、書き初めまいりますわよ」

 墨汁をたっぷりつけた筆をいきおいよく振り上げる桜子。墨があたりに飛びちり「うぎゃーっ」と逃げまどう人々。おかまいなしに筆を走らせる桜子。看板にでかでかと書かれた「魚春」という字は素晴らしく勢いのある達筆な字だった。思わずほれぼれする欧介。職人の手で掲げられていく看板を、仁王立ちになって見上げる桜子。

欧介 「やっぱり天衣無縫だ、桜子さんは」
佐久間達「なんて傍若無人な女なんだ」
桜子 「性格のいい人は字もキレイってほんとねえ〜」

 ぶんぶんと首を振る佐久間たち。桜子のとばしたで顔が黒くなっている。
 にっこりと顔を見合わせる欧介と桜子。

佐久間「おい、欧介の運命は決まったな」
花房 「一生尻に敷かれるってやつですか」
粕屋 「でもそれって佐久間んちとどう違うんだよ」
佐久間「なに?お前に言われたくないぞ。なみちゃんに頭が上がらないくせに!」
花房 「そうですよ」
粕屋 「なにぃ?お前こそできちゃった婚で恥ずかしくないのかああ!」
花房 「あっちくしょっ!できちゃった婚は今最先端なんだぞ。キムタクだって」
真理子「ちょっとそこ、いい加減にしなさーい!」


(ナレーション)
 やまとなでしこ、それは、ちょっと頼りない日本男児を、時には盛り立て、時には手のひらであそばせながら、自分自身がたくましく輝く現代日本女性のことである・・。

(完)

 

 ふ〜やれやれ、やっと終わったよ。やはり残り半分を創作するのは無謀であった(笑)。アホくさい妄想におつきあいくださいまして、ありがとうございました。(なーはる)


   
 

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