2004.6.12 きみぺ再放送記念スペシャル
〜 「きみはペット外伝 〜 パリで会いましょう」
さて先頃、関東地区ではめでたく「きみはペット」が再放送されました。
思い起こせば、本放送当時、モモ(松本潤)がドイツへ行かなかった最終回に巻き起こったブーイングの嵐(笑)。ならば、なーはるがモモをドイツへ連れて行ってあげましょう、というコンセプトで書き下ろした「きみはペット外伝」。
あれから1年。
せっかくの機会なので、前からリクエストをいただいていたアレをご披露したいと思います。「きみぺ外伝」のラストではちょっと物足りない、という方のためのおまけのラブラブ・ショートストーリー(?)でございます。
初めての方は、「きみはペット日記」の中にある「きみはペット外伝
〜 もしもドイツへ行ったなら」を先にお読みくださいませ。
「きみはペット外伝 〜 パリで会いましょう」 by なーはる
__ 3ヶ月後 フランクフルト __
早朝。どこからともなくミーハーな歌が聞こえてくる。
「ダーリン、ダーリン・・・♪」
ベッドの中から手を伸ばして、かたわらに置いてあるボーダフォンを手に取るモモ(松本潤)。受話ボタンを押すと、着メロの音が途切れて、
「・・・んー、もしもし・・・」
「もしもし、モモ?」
電話の主は、モモの元ご主人様。今はフランクフルトと東京で遠距離恋愛中の年上の彼女(とモモは思っている)のスミレ(小雪)だった。
モモは寝ぼけまなこで時計を見て、
「・・・スミレちゃん? 今日こっちに着くのお昼じゃなかったっけ・・・?」
「それがねモモ。実は、いいニュースと悪いニュースがあって」
「・・・え、何それ?」
「えーっとね、まず悪いニュースから言うと・・・・・・今日行けなくなった」
「えっ、うっそ!」
思わず飛び起きるモモ。
「ひどいよスミレちゃん、この前会ってから1ヶ月も待ったのにぃ〜!」
「ごめん、急に外報部で引き継ぎの仕事が入っちゃって」
「・・・ちぇーっ。・・・じゃあ、いいニュースって何?」
「来月行けることになった」
パタリと倒れるモモ。
「・・・あのさ、それって、ただ単に今月来れなくなったってだけの話じゃん」
「ううん、違うよ。来月はもっとたくさん会えるもん」
「え? なんで?」
「私ね、転勤することになったんだ」
「転勤? どこに?」
「ロンドン支局」
「・・・うっそ! マジで!?」
再び飛び起きるモモ。
「どうしよう、スミレちゃん。俺、涙出てきた、うれしくて」
「モモ、大げさだってば」
「だって、ロンドンってフランクフルトのすぐ隣りじゃん」
「ぷっ、それも大げさだって。じゃ、来月行くから」
「あ、待って。そしたら、俺がロンドンに行くよ」
「そう?」
「あ、待って。もっといいこと思いついちゃった!」
__ 1ヶ月後 花の都パリ __
「・・・もっといいことって、コレかよ」
シャンゼリゼのカフェで、ずずずとショコラショーをすするスミレ。
「ったく、いくらパリがロンドンとフランクフルトの真ん中だからって」
タバコをふかすスミレ。
「パリのカフェで待ち合わせだなんて、月9ドラマじゃあるまいし」
ミーハー嫌いなスミレが、なぜ月9のことなんか知ってるのかは謎だったが。スミレが不機嫌なのにはワケがあった。
「それは、さっきから、フランス男にナンパされまくっているからよ!」
タバコの煙を吐きながら、スミレはブツブツと、
「ったく、どうしてフランス男ってああなのかしら。待ち合わせだって言って断ってるのに、しつこく食い下がって。ずうずうしくヒトの手まで握っちゃって、『ふぅん、そんなに彼氏にマジなんだ。かわいい人だね』だと。よくあんな歯の浮くようなセリフが言えるもんだわ。かーっ、ぺっ!」
タバコをもみ消して、腕時計を見るスミレ。
「モモのやつ、まさか迷子になってるんじゃないでしょうね」
すると、そこへまたもや「Mademoiselle・・・(マドモアゼル・・・)」と、男の声。
ピクリとひきつるスミレ。しかし、男は続けて、
「Est-ce que je peux prendre du cafe´ avec vous?(一緒にお茶してもいい?)
」
スミレは、ショコラショーのカップを乱暴にガチャッと置くと、
「No. I'm just waiting for my ・・・(ダメ。待ち合わせなんですっ)」
スミレが顔を上げると、そこにはモモがいた。
「・・・へ? モモ?」
「スミレちゃん、ごめーん、待った?」
「あ、あれ? 今ここにフランス人がいなかった?」
キョロキョロするスミレを見て、にっこり笑顔で自分をゆび指すモモ。
「それ、俺、俺」
「えっ、うそっ。モモ、フランス語できるの!?」
「言ったじゃん、俺、オペラ座に留学したことあるって」
「あ、そういえば」
「でしょ? だから、ちょこーっとしゃべれんの」
モモは、スミレの隣りに座ると、スミレの手に自分の手を重ねて微笑んだ。
「・・・スミレちゃん、会いたかったよ」
その姿を見て、スミレは思った。モモはダンスの才能もあるけど、フランス人の才能もあるのではないかと。さっきのフランス語といい、ひょっとしたらオペラ座に留学してたときには、こんな風にフランス女の手に手を重ねてナンパしたかもしれない。
「もしかしてモモって・・・」
実はスミレの嫌いなナンパフランス男と同じタイプなのではないか? だいたい、パリで会うなんて月9的ミーハー発想もどうかと思うし。そもそもモモは、スミレのペットだったのに、いったい何でつきあうようになっちゃったんだっけ? ・・・というようなことを、3秒くらいの間に考えるスミレ。
「スミレちゃん、何考えてんの?」
「・・・はっ、ううん、別に何も」
いけない。この犬は鼻が利く、じゃなくて、モモは人の考えてることがわかる超能力もあるから、気をつけなくては。
「そ、それより、大変だったんだから」
「何が?」
「モモがちっとも来ないから、ナンパされちゃって」
「ナンパされたの?」
「そうよ、10人くらいにしつこくね」
「そんなに?」
「カフェのギャルソンまでナンパしてきたわ」
「それでさっき不機嫌だったんだ・・・あ、そういえば、さっき何て言おうとしたの?」
「え?」
「ほら、I'm waiting for my ・・・ 私の何を待ってるって?」
「え、いや別に」
モモは、スミレの顔をのぞきこんで、
「いーじゃん、教えてよ。俺はスミレちゃんの何?」
「何って・・・」
スミレは、ショコラショーのカップをくるくる回しながら、
「うーん、だから、つまり、ナンパ男があんまりしつこいから」
「しつこいから?」
「 ・・・waiting for my fiance(婚約者)、くらいかましてやろうかなって」
「・・・え」
「だって、フツーに待ち合わせだからって断っても、『こんな美人を待たせるなんてひどいヤツだ。俺に乗り換えないかい?』とか言うんだもん」
「・・・」
「でもほら、フィアンセなら、いくらずうずうしいフランス男でもちょっとは遠慮するかもしれないじゃない」
「・・・」
「ま、インパクトでいったら、husuband(夫)のほうがいいんだけど。フィアンセは、ほら、英語もフランス語も発音同じだから、通じないフリできないしね、ふふ」
「・・・」
「あ、でも、まさか『そんなフィアンセとは婚約解消して、俺に乗り換えないか?』なんてほざいたりして・・・」
と言いながら、スミレが振り向くとそこには、涙目のモモがいた。
「えっ? モモ、どうしたの!?」
「・・・スミレちゃん・・・俺と結婚してくれんの・・・?」
「へ? な、何言ってんの?」
「・・・だって、今、フィアンセって」
「えっ、だ、だからそれは・・・」
「あのね、俺、こんなの買っちゃったの」
バッグから小さい箱を取り出すモモ。
「ね、開けてみて」
「何これ?」
「いいから開けてよ」
スミレが小箱を開けると、そこには、
「・・・指輪?」
「そ」
「どうしたのこれ。モモ、お金ないのに」
「ん、この前、代役で公演に出たらギャラもらえたの」
「へえ」
「ね、どお? 気に入った?」
指輪を手にとってみるスミレ。
「これ何? ジルコン?」
「・・・え? ジルコン・・・って何?」
「人造ダイヤ」
「・・・じ、人造って! ひ、ひどいよスミレちゃん、ホンモノだよ!」
「え、あ、そっか、人造ダイヤはこんなに小さくないか」
「・・・ち、小さ・・・!?」
「そっか、そうよねー。偽ダイヤがこんなに小さいわけないよね。あはは・・・あれ? モモ?」
テーブルに向こう向きにつっぷしているモモ。
「モモ、どうしたの?」
「・・・傷ついた・・・」
「えっ!」
あわててフォローするスミレ。
「あっ、やだー、これよく見たら、すごくキレイ〜」
「・・・」
「ほら、サイズもぴったり。モモ、よく私のサイズわかったね」
「・・・」
「ほら、光が当たるとキラキラしてる〜。気に入っちゃった」
テーブルにつっぷしたまま、顔だけスミレのほうに向けるモモ。
「・・・ホントに気に入った?」
「うん、ホントホント。ほら見て、すっごいキレイ」
薬指にはめた指輪を太陽の光にかざして見せるスミレ。モモは、テーブルから顔を上げると、スミレの耳元でささやいた。
「じゃ、婚約のチューしよ」
「へ?」
「だって、これ一応エンゲージリングだし」
「えっ、そ、そうなんだ」
「そうだよ」
「・・・はめちゃった」
「ね、だからしよ」
「やだ、こんな人前で」
「いーじゃん、ここおフランスだし」
「ここはおフランスでも、私は日本人なのっ」
「俺だって日本人だよ」
「いーや、あんたはフランス人入ってる」
「いーじゃん、いーじゃん、しようよ」
そう言って、強引にスミレにキスするモモ。
「もう〜」
「・・・スミレちゃん」
「何よ?」
モモは、小さなダイヤの婚約指輪がはめられたスミレの手を握って、
「いつかもっと大きいヤツあげるからね・・・」
その言葉を聞きながら、スミレは不思議な気持ちになった。
・・・ある日、家の前に落ちていたダンボールに入って行き倒れていたモモ。行くアテもお金もなく、スミレのペットになったモモ。スミレの理想(3高)とはほど遠く(3低)、もしかしたらスミレのタイプでもなく。そんなのと婚約しちゃうなんてどうかしてる。
でも、なんだかまんざらでもない気分なのはどうしてかしら。小さなダイヤの指輪がいとおしい。恋とは、人生とは、なんて不思議なんだろう・・・。
♪私がまだ小さい時、ママに聞きました
私は何になるの?
美人になる? お金持ちになる?
すると、ママが言いました
ケ・セラ・セラ なるようになる
先のことなどわからない
ケ・セラ・セラ・・・・・・
(完)
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